観覧車から見える景色

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俺は複雑な気持ちで彼女に近づく。 「昴から心配してるから迎えに行ってほしいって、電話が来たんですけど」 正しく言うと微妙にニュアンスが異なる気もするが、まぁいいだろう。 「……観覧車に乗りたい」 「はっ?」 彼女はこちらを険しい顔つきで睨みながら、意味の分からないことを言った。 「乗りたいんですの!  連れていってくれません? むしろ命令です!」 「はぁ……」 よっぽど断ろうと思ったが。 よく見ると、彼女の瞳にはうっすら涙が滲んでいた。 「連れていきなさい、小野寺!」 泣きそうな顔で強がっている女の子を無碍にすることも、なかなか出来ずに。 「はぁ……別に、いいですけど」 そう答えると、彼女はさっさと俺の車に乗り込んでしまった。 今さらだが、どうやら俺は押しの強い人間に弱いらしい。 .
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