観覧車から見える景色

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車で走っている間、彼女は必要最低限のことしか話さなかった。 「観覧車って、どこに行ったらいいんですか?」 お嬢様は憮然とした表情で、ぼそりと呟いた。 「クロック・ガーデンは分かります?」 クロック・ガーデンは確か、東京と神奈川の境目近くの遊園地にある観覧車のことだ。 「名前と場所は分かりますけど、今から行くとけっこうかかりますよ?  あぁいう所って何時までやってるんですかね。 到着するのが十一時くらいになると思うから、もうしまってるかも」 「そこで」  「いや、でも」 彼女はぎらりと俺を睨んで、全く譲るつもりのない口調で言い捨てた。 「そ・こ・で!」 「……はい」 俺が答えると彼女はもう俺には興味がなくなったようで、そっぽを向いてずっと窓の外を眺めていた。 気まずい空気の中、ひたすら夜の道路を走った。 .
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