きっかけ

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 若干バランスを崩したお兄ちゃんは、怒って秀くんを怒鳴り付けた。 「お前、何してくれんだよ。もう謝ったって許してやんないぞ」  元々許す気なんかなかっただろうけど、更にヒートアップしたのは間違いない。  お兄ちゃんは、お返しと言わんばかりに秀くんに体当たりする。  二つも年の離れたお兄ちゃんと秀くんの体格差は歴然としている訳で、秀くんは勢いよく後ろに倒れ込んだ。  痛みに耐える秀くんの顔には、当然いつもの笑顔はない。  私はそんな秀くんの表情を見て息苦しくなってきた。  なんで秀くんがこんな事されなきゃいけないの? 「秀くんは関係ないでしょ。手え出すなって言ってるじゃん」  私は必死で抗議し、お兄ちゃんに向かっていく。 「お前らなんか二人掛かりできたって俺には敵わないんだよ」  お兄ちゃんは馬鹿にしたように鼻で笑いながら、私を突き飛ばした。  確かに敵う訳がない。分かってるけど……。秀くんに酷い事して欲しくない。  私と秀くんは、その後もひたすら抵抗を続けた。無駄だと分かっていても。  秀くんは、何をされても必死で私を庇おうとしてくれてた。お兄ちゃんが飽きてやめるまで、ずっと。  逆に私は、秀くんに手を出して欲しくなくて、お兄ちゃんを止めようと必死だった。  どのくらい時間が経ったのか分からない。やっとお兄ちゃんがやめてくれた時には、私は溢れ出る涙を抑える事が出来ず、泣きながら秀くんの元に駆け寄った。
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