Prologue

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――あんたなんか生まれて来なければ良かったのに。 ――だったら産まなきゃ良かっただろ。 ――目障り。気持ち悪いから私の視界に入って来ないで。 ――なら見なきゃ良いじゃん。 ――あんたさえ居なければ。 ――もうすぐ居なくなるから安心しろよ。  母親に暴言を吐かれて殴られ続ける。それが私の日常だった。  いつしか二つ年上の兄貴も、私に当たるようになっていた。  ガキの頃の私は、父さんが居た頃の幸せだった暮らしに憧れて、なんとか二人に好かれようと頑張っていた時期もあったけど、今はもうどうでもいいと思っている。  母親がおかしくなっていったのは父さんと離婚して程なく。兄貴が私に当たるようになったのは、それより少し後の事だった。  そんな環境でも笑って過ごすことが出来たのは、あいつが居たから。  なのに――。  あれはもう今から五年前、小五の時の出来事になる。
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