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「わりぃ。親が離婚する事んなってさ。母ちゃんについて神奈川行く事んなったんだよ」
秀人は困ったように小さく微笑む。
それにしても秀人のお母さんの実家は岐阜のはずだ。
実際、秀人んちで遊んでる時に何度か見かけたおばあちゃんが、「良かったら今度、美咲ちゃんも遊びにおいで。うちすぐそこだから」と言ってたから間違いない。
そこなら引っ越したって、いつでも遊べるのに。なんでまた神奈川なんだろう?
うちの親が離婚した時に私が転校しなくて済んだのは、母親の実家が近かったからだ。
なんで秀人のお母さんは実家に帰らないんだろう? それか秀人だけでもおばあちゃんとこ行けば良いのに。
秀人が父親についてくわけがない事は知っている。でも、おばあちゃんとこなら――。
秀人と離れたくない。
お願い秀人、行かないで――。
秀人が居なきゃ私は――。
「なんで神奈川なの? あのおばあちゃんとこは?」
私は秀人と離れたくない一心で、身勝手な思考をそのまま口にした。
「俺もそれ言ったんだけどさ。駄目って言われた。本当ごめんな。向こう行っても連絡するから。だからこれ、受け取って?」
秀人は私の顔を覗き込んで優しく微笑む。手には誕生日プレゼントが握られたままだった。
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