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「約束だかんな」
私は必ず実現するよう、祈りを込めて答える。
その時、無意識にプレゼントを握りしめていた。
「ああ」
秀人は優しい笑みを浮かべる。
その笑顔は、たった今受け取ったプレゼントに勝るとも劣らぬ、最高のプレゼントだった。
明日から見ることが出来ないと思うと切なくて、再び胸が苦しくなってくる。
行かないで欲しい。――祈るような思いも届く筈がなく、秀人が言葉を続けた。
「んじゃ、引っ越しの準備まだ終わってねえし、そろそろ行くわ。美咲、今まで色々ありがとな。康たちによろしく言っといてくれ」
秀人は笑顔を崩さなかったけど、どことなく寂しそうに見えた。
「分かった。私の方こそありがとな。連絡待ってるから」
本当はもっと話したい。
今まで秀人には言いたいこと何でも言えた。
なのに私は、物分かりの良い奴を演じてしまう。
秀人を困らせたくないのもあると思う。でもそれ以上に、言葉が出てこなかった。
お互いバレバレの作り笑いを浮かべて別れの挨拶を告げる。
そして、去り行く秀人と再会の約束を交わした私は、一筋の涙とともに秀人の後ろ姿を見送った。
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