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秀人との出会いがいつだったか、正確には覚えていない。物心がついた頃には既に一緒に遊んでいたから。
でも、急速に仲良くなったきっかけは今でもよく覚えている。
自宅から見える位置に公園がある私は、一人でもよく遊びに行っていた。その時、同じく家が近いという事で一人で遊びに来ていたのが秀人だった。
歳が同じという事もあって、自然に打ち解けていった私たちは、出会った当時から既に親友と呼べる存在になっていたと思う。
でも、そこまでならただの幼なじみ。本当の意味で特別な存在に変わっていったきっかけは、あの日秀人の秘密を知ってしまった事にある。
あれは、私たちが保育園に入園して最初の夏。私たちがまだ、秀くん、美咲ちゃんと呼び合っていた頃の事だ。
* * *
よく晴れた昼下がり。絵の具を垂らしたような水色の空に、ソフトクリームを連想させるような入道雲が広がっている。
燦々(さんさん)と輝く太陽を見ていると、夕方から雨が降り出すという天気予報など信用出来ない。
そんな穏やかな陽気の中、私は二つ年上のお兄ちゃんと一緒にいつもの公園に来ていた。
普段は優しいお兄ちゃん。でも突然人が変わったように癇癪(かんしゃく)を起こす事がある。
この日も些細な事がきっかけで口論になってしまった。
元々手が早いお兄ちゃんは、口論になるとすぐに手が出てくる。
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