長い夜

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真っ白なタオルで手を拭きながら 秋山さんがバスルームから戻って来た。 冷蔵庫を開けて、 オレンジジュースとコーラを出し 「どっちがいい?」 と聞いて来たので 「お…オレンジジュース…」 と答えると、 秋山さんはグラスにオレンジジュースをついで 私の前にコトッと置いた。 グラスについだコーラを持って 再び私の隣に座ると秋山さんは ゴクゴクと一気に飲み干した。 私がきょとんと秋山さんを見つめていると 大きくため息をついて秋山さんが言った。 「…はぁぁぁ… すっげー緊張する…」 …え? 視線を逸らさず秋山さんを見つめていると クルリとこちらに顔を向けて 「…俺だって… 本当はすっげー緊張してるんだからね。 ずっと思い続けて来た結衣ちゃんが こうやって俺の隣にいるってだけで 心臓が張り裂けそうだよ」 頭をポリポリかいて言う秋山さんの姿に 私はクスクスと笑った。 …そうか。 秋山さんも冷静そうに見えてたけど 本当はすっごい緊張してたんだな…。 そう思ったら、 少しだけさっきまでの緊張が吹き飛んだ。 その時、バスルームから、 お湯がたまった合図のチャイムが鳴った。 「…あ…」 私がバスルームの方を見て言うと 「…結衣ちゃん… 一緒に入ろう…」 秋山さんが微笑んで言った。
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