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春一番が吹き荒れる柔らかい日差しの朝。
今日は私の高校の卒業式だ。
「結衣ー!
大変!!ちょっと来てー!!」
母屋から響いて来た
危機迫るお母さんの声に
私は何事かと急いでリビングに向かう。
ドアを開けて
「お母さんどうしたの??」
と聞くと、そこにはこちらに背中を向けて立っているお母さんがいた。
「…ジッパーが閉まらないの!!」
私の中学の卒業式の時に着た
フォーマルのワンピースが
若干太ってしまって自分で閉められなくて
慌てふためくお母さん。
相変わらず天然すぎるお母さんに
苦笑いしながら、私は強引にジッパーを閉めた。
奥の洗面所では
お父さんが最近微妙に少なくなって来た髪を、ドライヤーで必死に立ち上げている…。
「ねぇ、結衣、今日秋山くんは来るの?」
お母さんが聞いて来たので
「うん、卒業式が終わる時間に
学校まで迎えに来てくれるって言ってた」
「そう!じゃ卒業式終わったら
お母さんもお父さんとデートして来よう!」
嬉しそうに言うお母さん。
そっと洗面所を見ると
微妙にニヤけるお父さんが鏡に映ってて
私は爆笑した。
お父さんの車で学校まで行くと
私はお父さんたちと別れて教室に行く。
教室に入ると、真理がニコニコしながら
「結衣!おっはよ!」
と手を振っている。
「真理おはよ!とうとう卒業式だねぇ…」
私が少しだけ寂しそうに言うと
「早いよねぇ…
ついこの前入学式だったのに…
もう卒業だもんね…」
真理もすごく寂しそうだ。
4月から、真理は食品関係の会社の経理
私はWEB会社の経理へと就職が決まっていた。
佐伯くんは、なんと明彦と同じ会社の
製造ラインへの就職が決まって
変な運命を感じて笑った。
「卒業しても、時々会おうね!」
真理の言葉に私もニコリと頷いた。
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