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変装を解いて部屋に入ってみると茶髪の小柄な女性が3人の兵士に体を捕まれていた。
悪足掻きする女性の顔は取り込んだ記憶に出ていた妹だった。
「チヒロ!」
シドの声で兵士達が振り向いたが、銃を構える隙もなくシドの拳で捻り潰された。
チヒロは床に倒れ、兄のシドに恐怖感を抱いた顔を向けた。
「チヒロ…」
手を差し伸べると目を瞑り手で顔を守る。
まだ幼さが残る顔には涙が浮かび上がっていた。
「シドにぃ…?」
恐る恐るチヒロはシドを見た。
なんだか生まれ変わったような顔をしているがチヒロの兄に違いなかった。
チヒロは無意識の内に抱きついていた。
「チヒロすまない。俺は……」
「なにがあったの? 軍隊がシドにぃを捜してるよ」
「わからない。何も思い出せない」
チヒロを立ち上がらせ、シドは頭を抱えて言った。
彼女が妹だったのも先ほど思い出したがそれ以上なにも思い出せない。
「取り合えずここは危険だ。どこか別の場所に隠れよう、何か宛はないか?」
「ん~…あるよ」
チヒロは友達が旅行で出掛けている間、部屋の掃除を頼まれていた。
2人は悪いがそこの部屋を使わせてもらうことにし、兵士の目を盗んでそこに向かった。
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