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「久しぶりに会うのに記憶が無くて悪いな。それより俺の家に行こうと思う」
「私も」
「ダメだ」
チヒロの言葉を遮り、後に言うであろう言葉を否定した。
余りにも危険だろう。
[ブラックアローズ]という見知らぬ軍隊に追われているのだ。
もし出会ったら戦うことになるかもしれない。
チヒロに説明すると解ってくれたのか、パソコンの前の椅子に座り小さな声でボソ、と言った。
「気を付けてね」
シドは無言で微笑を浮かべ、チヒロの頭を撫でてあげた。
何も言うことなくシドは部屋から出ていった。
残されたチヒロは静かにパソコンの電源を入れ、暗い部屋に淡い光が広かった。
シドはマンションの屋上に上がった。
真上の太陽を眩しそうにフードを深く被り、目の前のマンションの屋上を見詰めた。
距離は10メートル程だろうか、シドは屋上の低い策を越え、小さな段差に片足をかけた。
シドは今なら行けそうな気がした。
「この距離でも跳べる……俺なら出来る」
家の方向を向き、深呼吸。
そして一気に段差を蹴り、彼は跳び上がった。
それは一瞬の出来事だ。
下の歩道を歩いている人も気が付かない内にシドは隣のマンションに跳び移っていた。
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