32日前

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シドは驚くようすもなく、呆気にとられている訳でもなく、さっきまでいたマンションを見詰めていた。 どうやら一周して冷静になってしまたみたいだ。 現にシドの中は興奮が冷め止まない、もう一度いまの感覚を味わいたい。 そして、目的の方角を向くといま立っているマンションの2倍はあるビルが立ち、シドを更に高揚させる。 脚に全神経を集中させ、膝を曲げて力を蓄える。 奥で歯が擦れる音を合図に膝を一気に伸ばし、爪先で屋上を蹴った。 屋上にはその衝撃でヒビがはいり、シドはビルの天辺に向けて跳び上がった。 だが、あと少しの所で届かなかった。 無理と判断したシドはビルの壁を掴んだ。 指が壁に突き刺さり、体が止まる。 「無理か…」 そう呟いたが、彼の口元は笑みを作っていた。 指を突き刺したまま、懸垂を利用して屋上に跳び上がり、シドは街を見渡した。 「これが俺の街か…殺風景だな。家は………あのアパートか?」 ここから見渡せる近くのボロいアパートがシドの家だ。 妹が言うのだから間違いないだろう。 シドは屋上の端に下がり、助走をつけて跳んだ。
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