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3月4日木曜日。
午後3時22分。
(なんだ………これ?)
本日は快晴なり。
熱い陽射しと冷たい風が絶妙にマッチして、ちょうどいい具合の気温だろう。
(いたずら……メール?)
だが空調の効いた電車内にいる彼にとっては、今の気温などどうでもいい。
いま眼中にあるのは……。
『差出人:……@ENDing.ne.jp』
彼――黒い学生服を着た少年――竜崎 真、16歳は電車の椅子にドッシリと身を置きながら、黒い携帯の画面を眺めていた。
(なんだよ………このメール。)
携帯に表示されている新着メール。
差出人は、全く知らないメールアドレス。
…@ENDing.ne.jp
いや、そんな事は大して関係ない。
少年が気を引いたのは、その本文。
『自分の世界を変えてみませんか?』
で始まる、丁寧文章。
そして、『変えたければ、空メールを送れ』。
で終わる、命令文章。
短い用件に自分は一瞬、目を白黒させた。
(おふざけ………だよな。)
そう思って彼は携帯を制服のポケットにしまう。
学校の友達のイタズラか、迷惑メール。
もし後者だとしたら、空メールを送った瞬間、どうなるのだろう。
個人情報が流出か?極悪ウイルスの侵入か?
そんな事を考えながら、竜崎は視線を窓の外の景色――新楽町の住宅街に移した。
(自分の世界を変えてみないか?………か。)
彼は憂鬱そうに町の先にある港、そこから続く海を眺める。
(自分の世界なら、とっくの昔に変わった。)
ため息を小さく吐き出すと、彼は立ち上がる。
(………代償もついて)
『次は〈金本〉。〈金本〉に停車いたします。』
電子音が響いた後扉が開かれ、彼を含めた数名がホームに降り立つ。
大体の者は改札口に向かったが、竜崎は人の流れに逆らい談話室に向かう。
彼の、この駅に降りた目的が〈電車の乗り換え〉だからだ。
談話室の扉を開けようとして、彼は思いとどまる。
ガラスでできた談話室の壁。外から見ても、自分の座る場所などないことが伺えた。
また、彼はため息を吐き出して仕方なく外の椅子に座る。
(まあ、いいか。)
何気なく、過ぎ去っていく電車を眺める。
その時だった。
(!!)
電車が突如白い光に包まれる。
「え……」
驚きのあまり言葉をこぼす。
「なん……」
そして電車は、
爆発した。
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