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まず強烈な光。
次に、とてつもない威力の爆風が彼の体を吹き飛ばした。
「うわッ!!」
脳が状況を理解する。その前に、彼は壁に叩きつけられて、頭を強くうち、意識も吹き飛ばされた。
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『速報です。新京都第23区エリアEこと新楽町で〈特殊事件〉が発生。第ニ級危険区域に認定されました。緊急避難発令、及び5時間後に封鎖命令が防衛署から下されました。区域内の市民は〈特務員〉の指示に従い速やかに避難してください。近隣のエリアの方々も注意して自宅や職場、もしくはお近くの施設にて避難するよう、お願いします。
繰り返します。新京都第23区エリアEこと新楽町…………』
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竜崎 真は夢を見ていた。
走馬灯のような、それに近い夢。
彼が次に目覚めるまでの2時間。その間に、彼は今までの16年間を流れるように速く、それでいてしっかり見ていた。
そして、電車の爆発の記憶。
そこまでたどり着くと、次は6年前の映像が流れだす。
小学4年生。10歳の彼は赤い自動車の助手席に乗っていた。
隣の運転席には彼の母。
車は夜の高速道路を、もの凄いスピードで駆け抜けていた。
スピードは軽く100を越しているだろう。
「母さん……」
真少年の問いかけに、彼の母は何も反応しない。
「どこに向かってるの?」
またしても彼の母は答えない。
「ねえ、母さん」
「……………。」
「俺を捨てようとしてるの?」
「…………フフッ」
そこで、初めて反応する。
彼女はチラリと彼を見て、笑う。微かに小さく。
「……そんなわけ。ないでしょ。」
笑いまじりの何気ない言葉。それでも、彼は。違和感を感じた。
「……ヒッ………ヒッ。」
その時。彼の耳が音を捕らえる。聞き慣れない音。
「……母さん?」
それは、隣の人物が発した声だという事に気づくのには少なからず時間を要した。
「………泣いてるの?」
彼は自分の母の横顔を見る………。
そこで、目が覚めた。
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パチリと目を開けると、彼の頭上にある屋根が見えた。
(駅のホーム……だよな?爆発が起きてそれから……)
彼は、ゆっくり上半身を起こした。
途端に、今の状況が目を通して脳に飛び込んでくる。
同時に頭に響き渡る、脳内警報。
(なんだよ……これ。)
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