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「うぅ…………」
喉が上手く動かない、いったいどれ位眠っていたんだろう。
体も動かず、首すら動かせなかった。
ガチャリ
「はーい、○○サーン今日もいい天気ですね」
看護婦らしき女が部屋に入って来た。
すぐさま自動のベッドを起こされると外の景色が目に入った。
「あぁ…………あ」
「どうしたの○○さん、何か良い物でも見えた?」
見た事の無い景色だった。
空を走る車・奇怪なデザインの建築物・黄色い空には浮遊する建造物等、見た事も無い物が軒を連ねた。
しかし、そんな物はどうでもよかった、ビルに映し出された日付はあの事件から二十年も経っていた。
二十年間の寝たきりは体の自由を奪い、歳月を重ね、事件その物を風化させた。
けたたましい選挙カーが通る。
「我々は新たなる時代の守護者である、報復サービスの社会は成功を治め各国の脅威を………」
報復国家の成立、科学の異常発展、しかし男にとってそんな事はどうでもよかった。
これからの残りの人生をどうするか、もうそれ以外は何も考えられなかった。
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