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でも、彼女に皮肉めいた楽しい口調が聞こえる時には……俺は、花の蜜をこれから先一滴もこぼさないように、あごをしっかりと花に当てて、あふれ出てくるのを待ちきれなくなりジュルジュルと音を立てて、吸い上げるようにむさぼっていた。
それはジュースに残った氷が解けた水をストローで吸い上げるように下品な音であり、ラーメンやそばなどの麺類を食べるときのようにすすり上げる音でもある。
もちろんわざとではない。もっと、もっと蜜が欲しいのだ。
普通の花の甘くて優しい蜜とは違い、これはしょっぱくて、クサイのに。
なんという中毒性のある蜜なんだ。
今の姿を彼女に笑われても止めない。いや、止めようとしてきた腕を振り払うだろう。
俺は……。
「夢中ね。いいことだわ」
――ハァ、ハァ……。
何が起きても止められないと思っていたのだが、息を吸うため離れた。
クラクラするのは軽い酸欠と、このニオイ。
肩で大きく息を吸うと、再び吸い付きにいく。
「鼻で息すればいいのに……」
ため息交じりで呆れた口調は不思議とよく聞こえてきた。
ああ、そうだ。なんでそんな単純なことを忘れていたのだろう。
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