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「珍しい花があるの」
彼女と一緒に訪れた一室。
部屋を開けると、花のニオイなのか、ふわりと僅かに漂う甘い香りと……顔を背けたくなるような酸っぱくて、ツンとしたクサいニオイが混ざりあって部屋に充満している。
嫌なニオイだ。でも、我慢は出来る。
広さは六畳くらいだろうか、一人でいるには広い。
中には、四角く板で作られた長い箱が二つと、向こう側が見えないガラスが張られている。
四角く細長い箱は、ガラスから出ていて、俺から見るとハの字に広がっている。
箱に沿って進み、ガラスに突き当たると目当ての花があった。
花屋に勤めていて、海外へ珍しいのも見に行ったが、不思議な囲われ方をしている。
「ほら、そこよ」
彼女が指差す所は、丁度ハの字に広がった根元。
ピンク……いや薄い桜色のツボミ?
疑問に感じたのは、ツボミのカタチだ。
特殊な花なのか、枝が無い。また、空に向かってツボミは出ていない。
それから、ツボミといえば花びらが窄まって先端が尖っているのだが、この花は違う。
人差し指ほどの長さにスッと綺麗に縦に割れ目が入っている。
ふっくらとした合わせ目から花と言うよりも、なにかの実に見える。
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