名も知らぬ花

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当てていた両方の親指をゆっくりと開く。 ムワッと立ち込める臭気は、入って来たよりも強く俺を刺激してくる。 菱形に開いた花。 瞬きをするのを忘れるほど、鮮やか……艶やかというほど、綺麗なピンク色で。 不思議なカタチをして、よく蜜でしっとりと濡れている。 花びらは親指で押さえている内側に、グルッと開いた一枚の花びら。 花の上にはおしべかめしべだろか、小さな突起。 一枚の花びらの中には、小さなくぼみ。 それと……これは、穴? カボチャの花の様な……大きめのくぼみ。 しかも……息をしているかのようにヒクヒクと動いている。 「これは雌花よ」 ――雄花は? 「別に咲くのよ」 普段良く見る花は主に両性花で、花の中にめしべとおしべがある。 しかし、ヘチマやカボチャなど、めしべとおしべが別に咲く花を単性花という。 これは、単性花か。 ――上の突起がめしべ? それと……小さなくぼみと大きめのくぼみは? 「一つずつ、教えていくわね」 視界の上から銀色の、教師がよく使う教鞭が出てきた。 「ここが、めしべ」 指したのは、一番大きなヒクヒクと動く、くぼみ。 「この奥に、受粉するためのめしべがあるのよ」 ――何のためのくぼみ?
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