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「おしべを奥までしっかりと掴んで、しっかりと受粉するためのくぼみよ」
――なるほど……じゃあ、この蜜は何のためにある?
よく考えれば、めしべは大気中に舞ったおしべの受粉するために突起しているから、おかしいって思う。
色のせいか、ニオイのせいか簡単に納得した。それどころか、質問していた。
「それはおしべを迎え入れるために出る蜜なのよ。後で嘗めてみましょう?」
そう言うと教鞭をなぞるように、上へと上げていく。
止まった所は、小さなくぼみ。
「ここが老廃物を排泄する所なの」
――へぇ。凄いなぁ……。
マングローブとかは塩分を排出するために、古い葉に流し込んで落ち葉にする。
でも、これは。
――排出するんだ。
「水鉄砲みたいに勢いよく排出するのよ」
――今見れるかな?
「んーちょっと無理かな。運が良ければ、ね」
笑いを含んだ彼女の明るい声に、俺は振り返る事はない。
目の前の花に、息をするのを忘れるほどに完全に目を奪われて、瞬きの仕方を忘れてしまったようだ。
「……大丈夫? ……じゃあないみたいね。フフフッ、これが目が皿になるようって言うのね」
銀色の教鞭がいつの間にか一番上に行っていたのに気がつかなかった。
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