名も知らぬ花

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彼女の言った先から溢れ出た蜜は……水溜まりを作っている。 めしべに近づくにつれて、よりはっきりと形が明らかになる。 筒のように中はすべすべとはしていない。蛇腹ホースのように突起物が見える。 これもおしべを迎え入れるための機能なのか。 そんな事を思っていたら、ピントが合わないほど近づいていて。これから嘗める蜜の味をイメージしていた。 花の蜜だから、甘いのだろう。口の中は唾液が溢れる。 ――……じゃあ……いただきます。 ゴクリ、と周りに聞こえるほど大量のつばを飲み込む。 舌を伸ばして更に近づく。 くぼみの下に、ちょこんと触れる程度。さすがにこれでは、味はわからない。 わかるのは、テラテラと光りを浴びて出ている蜜。見た目とは違いサラっとしている。 思い切ってすくうように、舌全体で舐めとる。 僅かに酸っぱくて、しょっぱい? アイスプラントという植物は塩水を撒いて育てるため、葉に塩味がするらしい。 これは、蜜自体がしょっぱい。 何のためにしょっぱくなったかわからない。自然界って凄いな。 「やっぱり、花や植物が好きってわかるのね。これほど出るなんて、凄い事よ」 ――そう? なのかな?
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