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1.いや、それ違う…
1学期が始まって間もないころ、御堂学園高等部の屋上で黒い男子生徒と蒼い女子生徒が背中合わせに上空を見ていた。
春独特の穏やかな風、その流れに乗せられた薄紅の桜の欠片。
司:「平和だな…」
藍:「そうだね~」
男子生徒、司は明らかに眠そうな表情をしていた。
背を向けた状態で、女子生徒、藍はのんびりと文庫本をめくる。
司:「…悪ぃ、背中借りる」
藍:「うん、いいよ」
普通なら女子が男子に背を借りるのが一般的な気もするが、これが二人の日常と言うことで。
背を借りて間もなく、静かになった。
ちらと藍が目線だけ後ろを向くと、規則正しく肩を揺らして眠る親友の姿があった。
藍:「クス、相変わらず寝るの早…」
その後当たり前のように読書を再開したが、さすがに体格差もあり、数分後には疲れてきた。
藍:「膝枕してあげよ」
本に愛用している蒼色の栞をはさみ、司の体を支えたまま自分の体の位置を変える。
藍:『あ、でも本が遠ざかっちゃう』
ちょうど自分の向かいに司の背が見えている状態で右腕を本へと伸ばし、ギリギリ届いた。
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