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「じゃあ行ってくる」
「はーい、行ってらっしゃい」
我が母、一宮紗枝(かずみやさえ)が温かく見送る。全く、俺はもう十七だぞ。
家を出てすぐにうなだれている俺、一宮璃玖(かずみやりく)は四月三日で十七歳になり、一週間後に高二になる。
今日は特に用は無い、と言えば嘘になるな。だって……………。
「りっくん、遅いよ!」
「ああ、悪い夏穂」
今、俺の目の前で腰に手を当て、怒っているアピールをしているちんちくりんは伊勢夏穂(いせなつほ)といって、俺の幼なじみだ。
ちなみに、ちんちくりんと言うと怒るので注意だ。
「まあまあ、落ち着こうよ夏穂ちゃん」
こいつは俺の悪友にして親友、西川亮(にしかわりょう)。特筆すべきことは…………無いか。
「扱い酷っ!」
「何言ってんだ?」
「そうだよ西川くん」
「お、俺がおかしいのか…………?」
亮はキメ顔でそう言った。
「いや、言ってねぇよ!?」
「だから何言ってんだ?」
「…………なんでもない」
そう言って亮は頭を抱え、座り込んでしまった。
「さて、座り込んだ馬鹿はほっといて…………」
亮は弄られキャラだが、意外に顔は良い方なんだ。しかし、オタクというのがモテない原因になっているらしい。
あ、今思えばこれ、特筆することだよな?
「今日はまたどうして集まった?」
「うーん………なんとなく?」
疑問形で返しますか、夏穂さんや……。
「全く、じゃあ喫茶店でも行くか?」
「あっ、賛成♪行こっ!」
夏穂はそう言うと俺の手を引いて走りだした。
「あっ、おい!」
俺は転ばないように走りだした。
「…………あれ?璃玖ー?夏穂ちゃーん?」
亮の存在を忘れて……………。
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