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そう考えていくうちだんだんと、瀬戸に対するシンパシーが増してくる。ビジネスオンリーではなく、彼のためにいろいろと世話を焼いてやりたい気持ちになっていった。今回に限らず、依頼を受けるときは、大抵そうだ。まあ、それはおせっかいな俺の性分なんだろうと思う。
「では、この手帳、お借りしていいですか?」
「はい、どうぞ」
俺は、瀬戸から手帳を受け取った。
「じゃあ、あとは実際に成りかわった人が仕事をしてみてからですね。またいろいろと聞くことも出てくるでしょうし、その時は、私がうかがいますから」
「はい、わかりました」
瀬戸は、大きくうなづいた。
「では、明日の朝から、ここに寝泊まりしてください。明日は私いませんが、なにかあればヒトエに言ってください」
「はい、わかりました。ひとつ、よろしくお願いします」
瀬戸は立ち上がり、深々と頭を下げると、引き戸を開け駅へと続く暗い道に消えていった。
――さて、と……
携帯電話を開き、さきほど撮影した写メを専用のアプリケーションから開く。
――ピコン!
電子音がして、画面にOKのウインドウが出た。奥の部屋から出てきたヒトエが、俺の姿を見てうなづく。どうやら、俺の姿は瀬戸に成りかわったようだ。
――明日の朝から、ミッション開始、だな……
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