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5
――ここもでかい会社だな……
東西南北エンジニアリングのビルに到着した。建物は十二階建て、駐車場のアスファルトはまっ黒で、ところどころにチョークで線が引いてある。それは、まだ建設されてそれほど日にちがたってないことを表していた。
――さあてと、どうすっかな。
正面入り口は円形のアトリウムになっていて、総ガラス貼りになっているため、中の様子が見える。受付には、先ほどの火の車産業と同じく、二人の受付嬢が並んで座っていた。
――誰か担当者がわからないと、正面突破は厳しいなあ……
思案しながら、建物の横から裏のほうへ歩いていく。裏に回ると、業者専用らしい出入り口があった。トラックが横付けできるスペースがあり、まさに宅配便のトラックが荷台を開けている最中だった。
――納品所か、こいつは使えそうだ。
トラックに近づいてみると、若い運転手が、積み上げられている段ボール箱を抱え、業者用の入口から中へと運んでいた。
――こいつに便乗するか。
そいつが建物内に消えたのを確認し、俺も箱を一つ抱え、中へと入った。すると
「あ! ちょっと!」
入ってすぐの小窓から俺を呼び止める声。
――ギクッ!
恐る恐る小窓を見ると、年配の守衛が小窓を開け、顔を出してきた。
「名前、書いたかい?」
「あ、すみません! 先輩が先に入っちゃって……俺、場所わかんないもんすから。見失わないように、と思ってつい」
俺は迫真の演技で慌てつつ弁明した。
「あっそ、んじゃ、これだけ持ってって」
と言って、守衛はバッヂを俺に差し出した。
「はい、お世話になりまーす!」
俺はそれを受け取り、お辞儀をすると早足で中へ入った。
――ふうう、びびった……
胸をなで下ろして中へ入ると、中央の廊下を挟むように両側にエレベーターが三基ずつあった。そしてその先に、荷物用の大型のエレベーターが一基見えた。
――ここに置いとけば気付くだろ。
俺は、抱えていた段ボール箱を、さりげなく荷物用エレベーターの前に置くと、素早くその場を離れた。
――さあてと、どうしようかな……まずは、やっぱ総務部でものぞいてみるか。
守衛から渡された来訪者バッヂを胸につけ、総務部を探すべくエレベーター横の案内板に向かう。総務部は三階、とあった。
――三階か。
ちょうど近くのエレベーターが開いた。俺はそれに乗り込み、三階へ。フロアへ降り、左右を見回すと総務部と書いてあるプレートが見えた。
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