成り代わり

8/56
前へ
/56ページ
次へ
2 あれは、今から五年半ほど前のことだ。当時、持っていた携帯電話を壊してしまった俺。新しい機種がほしかったが、バイト生活で貧乏だった俺は、いろいろ考えた末、ネットオークションで手に入れることを思いついた。さっそく、インターネットでオークションのページをめくっていると、とある出展物に目がとまった。 ――なんだこれ? 一円? なんと、携帯電話が一円で出展されていたのだ。 ――これは、とんでもなくお買い得だなー!  一瞬、喜んだものの ――でも、こんなの、すぐに値が上がっちまうんだろうなあ…… と、すぐにテンションは正常に戻った。まあしかし、ダメ元で、と思いつつ軽い気持ちでオークションに参加。ところが、翌日の朝、ネットでチェックしてみると…… ――あれ? まだ一円のままだ。誰も気付いてないのかな 最初は、いずれ値が上がっていくだろう、とタカをくくっていた。しかし、いつ見ても、俺以外には誰一人としてオークションに参加してくる者は現れなかった。 ――もし、このまま誰も参加してこなかったら…… 最初こそ、それほど期待してなかった俺だが、オークションの期限が近づくにつれ、その期待は徐々に高まっていった。 ――今日もまだ誰も参加してないぞ!  あと三日、このままいけば…… そんな感じで日にちは過ぎていき、ついに締め切りの日。 ――落札、できちゃった…… オークションはあっけなく終了、かくして俺は一円で携帯をゲットしてしまったのである。 ――ほんとに、俺、でいいんだよ、な…… 落札前は天にも祈る気持ちだった俺だが、いざ落札してみると、なにかきつねにでもつままれたような気になった。 ――もしかしたら、よほど状態の悪い品なのかもしれないな。でもまあ、一円だし、いっか、使えなかったら捨てちまえばいいんだし…… 結局、使えればラッキー、ぐらいに気持ちを整理した俺は、品物の到着を待った。すると、なんと翌日にその携帯電話は宅配されてきた。箱を開けてみると、一見、なんの変哲もないが、ちゃんとした携帯電話が入っていた。 ――思ったより全然きれいじゃないか! これで使えれば超ラッキーだぞ! すぐさま携帯電話を箱から取り出し、説明書を開いた。すると、そこには驚くべきことが書かれてあった。 ――これは、人に成りかわることができる携帯電話です? なんだこりゃ……
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加