第一章

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俺と男と痴漢は電車から降りた。 痴漢は今もなお、否定を続けている。 そろそろ時間がヤバくなってきた俺は、なんだかどうでもよくなってきた。 「…もう大丈夫です。俺…じゃなくて、私、急がなきゃなんで」 困ったような表情を浮かべれば、男は仕方なく痴漢の手を離した。 「良かったですね。今回は優しい方で」 キッと睨んだその男は低い声でそう言った。 痴漢はというと… 男の睨みに恐怖を感じたのか、一目散にその場から走り去っていった。 「ホントに良かったんですか?」 痴漢が走り去っていった方向を見つめていたら、ふと男の声が聞こえた。 「え?」 「痴漢を警察に突き出さないなんて…」 そうは言われても、俺は女装をしているわけなのだから、警察に突き出したとこでバレてしまう。 …それに 「時間!!やばっ、あと10分じゃん!」 時間がないのだ。 「お急ぎですか?気を付けてくださいね」 男は俺の反応に少し驚きながらも、優しく微笑んだ。 「あ、はい!ありがとうございました」 何度か頭を下げて俺は先を急いだ。 .
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