第二章 暫定殺人

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「――姉ちゃん、いい加減に電話使うの代わってくれよ」 「うるさいわねぇ。あと少し、十分だけ! もしもし? ううん何でもない! でね、その子がさー……」  立橋 天の姉、立橋 空(タテハシ ハルカ)の長電話癖はいつもの事だった。  彼女は生まれつき体が弱く、特に日の光を浴びるのを苦手とし、一日の大半を室内で過ごしていた。そのため肌も髪も白い。  それでも白髪は銀髪と喩える方が妥当な程綺麗に手入れされ、弟の天から見たら三歳年が上の空は実に魅力的だった。恋情は生まれなかったものの、血が繋がっていなければ間違いなく惚れていただろうと思う程だ。 「あーぁ、姉ちゃんのせいで俺の恋は実らないのかぁ……」 「うっ……え? あー……何か弟が電話使いたがってるから切るね! また今度電話しよ! それじゃあねー」  ガチャリと親機を置く。  下方に向いた顔を上げると、憮然とした表情で天を睨んだ。
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