第二章 暫定殺人

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「何の用だか知らないけど、別にちょっと遅れたぐらいで何かある訳じゃないでしょ。もっと男らしくしなさいよ」 「早いに越した事はないだろ?」  空は唇を尖らせて、渋々電話機の前から退いた。携帯が未だに買ってもらえていない立橋家、特に病弱な空にとっては、家電と略されて呼ばれるこの電話機が重宝されている。  そのため立橋家においての電話機は、夕食時のテレビのリモコン争いに似た状態を招いているのだ。  お節介でわがままな姉がいなくなった事を確認して、立橋は目的の人物が持つ携帯の電話番号を押していく。  恋と自分で言ったものの、まだ自分でも彼女の事が好きなのかどうか定かではないのだが、初めて抱きつつあるこの気持ちは日に日に増大していっていた。  そしてついに電話をしようと思い付いたのだ。
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