第二章 暫定殺人

4/164
前へ
/804ページ
次へ
 わがままな姉を持つ、当時中学一年生の立橋は、クラスの中心人物とも言える、かなり大胆で明るい性格の持ち主であった。そしてそれは、中途半端に抱く恋情にも負けずに、積極的にアタックをしていく行動にも表れていた。  しかしさすがの立橋も、呼び出し音を聴いている間の静けさと無機質さは緊張した。長く感じた。 『もしもし?』 「あ、俺、立橋だけど……」 『あぁ、立橋君! この番号立橋君家のなんだ!』 「うん。携帯持ってないから家電からかけるしかないんだよね」 『へぇー、携帯持ってないなんて珍しいね! とりあえず後で登録しておくね!』  明るい声色は、立橋の不安を一瞬で払拭してくれた。  それでも受話器を持つ手は、震えて止まなかった。  これが恋愛というモノ。身に染みて感じていた立橋は、不安の中にある、恋をしているという高揚感も楽しんでいた。
/804ページ

最初のコメントを投稿しよう!

423人が本棚に入れています
本棚に追加