第二章 暫定殺人

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「ど、どういう……強盗!? 何なんだよ姉ちゃん……!」  落ち着かせるための独り言は、掠れるような声色で宙に散った。  男は空を縛り終えると、今度は辺りを見回し、物色し始めた。  箪笥、引き出し、クローゼットに小物入れ。さらには本棚や台所まで隈無く探し始めた。探し方から見て、間違いなく強盗だろう。 「金目の物はどこにある?」  口に付けたガムテープを引き剥がしながら、懐から取り出した物を、空に突き付ける。ナイフだった。それも鈍色に光るバタフライナイフ。  太刀打ちできない。できるはずがない。緊張感に圧迫された立橋は、動く余裕すらなかった。
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