第二章 暫定殺人

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「ないです……」 「嘘吐くんじゃねぇ! お前病弱なんだろ。知っているんだぜ? 家族構成。両親と弟と妹がいるんだろう?」  断言されて心臓が高鳴ったのは、姉弟同時だった。  計画的犯行。恐らく病弱な空だけがいる平日のこの時間帯を狙ったのだろうが、今日はたまたま立橋が家にいた。奇遇にも学校の創立記念日であったからだ。だから春山も外出している。 「……何もないんです……少なくとも私は知りません。知らない物は教えられません」 「……ふん。まぁじっくり漁らせてもらうぜ」  空の口を再び塞いで、リビングの、立橋がいる扉とは違うもう一つの扉から出ていった。  静かに、足音を忍ばせて立橋は駆けた。空は立橋の姿を見てホッとした表情を見せるが、すぐに困惑の色を浮かべた。
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