第二章 暫定殺人

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「痛っ……」 「……返事はなしか。どうする? このまま弟に見捨てられて無様に死ぬか?」  次には空に馬乗りになる。縄できつく縛られ、擦れて皮が剥がれるのを我慢しながら、空は何とか身を捩って抵抗する。  そんな事お構い無しに、空の衣服を切り裂き始めた。 「ちょっ……と! な、何を……」 「はぁ? お前みたいな女、ただで殺すはずねぇだろ。見てんのかは知らねぇが、見せしめだ。犯されて死ねよ」  ブチッ、という音は、果たして空の服が破けていく時の音なのか、立橋の堪忍袋の緒が切れる音なのか、本人さえ分からなかった。  もう我慢ができない。むしろここを黙って見過ごそうとしている自分に我慢ができない。  出よう。死んでも、姉ちゃんと一緒なら。  その思考が頭を過った瞬間―― 「姉ちゃん……」  ――不意に、天と空の視線は重なった。
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