第二章 暫定殺人

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「も、もうこれ以上は止めろ! お前は逃げられない。さっき携帯で警察を呼んだからな!」 「……ほう……じゃあ捕まえられる前にお前も殺しておくとするか」 「……な……こ、これ以上罪を重ねたらお前の刑期が長くなるだけだぞ!」  ボウイナイフを慣れた手付きで弄りながら、含み笑いで立橋のハッタリに答える。  その傍で空は、蹲りながら吐血していた。  元より長くない命をさらに短くした男が、憎い。赦せない。しかし彼以上に赦せない者がいた。  自分だ。  いつも姉には尻に敷かれ、されるがままだった。それでも自分が男である以上、いつでも形勢逆転など可能だと思い上がっていた。
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