プロローグ

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プロローグ

 笑顔で下校する高校生達。その中で一際輝く黒髪の少女がいた。彼女は駅に向かう友人に別れを告げ、背を向けて逆方向への道を歩く。 その時・・・・・・、 [ドオォ――――――――――――ン!]  まだ日が沈むには数時間あるというのに、空に大きな音が響き特大の花火が上がった。下足場にいた生徒や門の外へ出てしまっていた生徒はもちろん、まだ校舎に残っていた生徒も窓から顔を出して外を見上げる。空中には大きな光の輪が広がっていた。 [キッ]  車の短いブレーキ音。その黒い大きなセダンタイプの車から二人の男が降りて来る。共に車と同じ色のスーツとサングラスだ。怪しげな男達は黒髪の少女の後ろに迫った。 「えっ・・・・、あっ! やっ・・・・う・・・・もごもご」  少女は悪漢の存在に気がついて振り返ったが、声を出す暇も無く口を布のような物で塞がれた。  男達はすばやく周りに視線を動かす。道路に車は無いが、辺りは高校生だけではなく主婦や子供達もいる。しかし、誰もが空を見上げていてその一連の行為には気がついていなかった。 [バタンッ]  一人が黒塗りのリムジンのドアを開け、もう一人が少女を抱えながら飛び乗る。それを確認すると、扉を開けていた男はすぐさま運転席に乗り込んだ。エンジンをかけっぱなしであった車は間髪要れずに発進する。  少女のいた場所にはわずかな排気ガスの匂いしか残っていなかった・・・・。
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