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騒ぐハルミを尻目に俺達は教室を出た。
そう言った夢を見るからってシズカに不満があるわけじゃない。
どうしてそんな夢を見たのか、俺が一番不思議に思うくらいだ。
シズカとは二年生になり知り合い、何をきっかけしたかは忘れたが良く話すようになった。
ハルミと違って落ち着いていて、成績も上位にいる優等生だ。
俺とはかなり趣味が合い、見たい映画も同じ、食べ物の好みも同じ。それに、まるで心を読んでいるかのように俺の気持ちを分かってくれる。
まさに運命の人を思わせてくれる女の子だ。
シズカと付き合うようになってから、何かとちょっかいをかけてきたハルミは気を使って俺と距離をとるようになった。
だからか、シズカはハルミがいるところではいつも申し訳無さそうな顔をするのだと思う。
「短かったよね、一年間・・・」
「? ・・・ああ。まあな」
映画を見終わり、ウインドウショッピングをしながらブラブラと歩いているときにシズカがそう言った。
不思議だったのは、どうしてか寂しそうな顔をしているからだ。
まるで・・・お別れをするかのような・・・。
「楽しかったよな?」
「すごく楽しかったわ。・・・・」
シズカは濁りの無い表情で俺を見る。だが、すぐに視線を落としてしまう。
俺は嫌な予感がそのまま口をついて出てしまった。
「もしかして・・・・・・・別れたいとか?」
「違うっ! ・・・次の一年もヨシトと楽しめればいいなって・・・思っただけよ・・・」
歯切れは悪いが、「違う」と即答してくれたことで俺は安心する。
もし俺が感じてしまった通りなら、そこは返事をしなかったり変な間を空けたりするはずだ・・・。
「なら、三年生になってもよろしくな!」
「・・・・え・・・ええ」
学年が上がり、次はクラスが別々になってしまう事を恐れているのだろうか。唇を噛んでいるシズカの頬を、俺はそっと撫でた。
彼女は俺に向かって顔を上げる。
・・・人が見ていたって構うものか。
そんな俺の視線がシズカから外れる。
目を閉じているシズカの向こうでチカチカと点滅するものがあるのだ。
それは若者達が待ち合わせをする際に良く目印にしている大型のビジョン。それが、故障でもしたのか砂嵐や青や赤の乱れた絵を繰り返し映し出している。
「・・・どうしたの?」
いつまでも唇を重ねて来ない様子にシズカは目を開け、俺の視線を追って後ろを振り返った。
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