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俺と柚子
その人は金色の瞳を輝かせて俺を見ていた。
しかし、俺はそれが気味悪いなんて少しも思わない。
心の奥底まで届くかのような金の光。
それは、日光のようにいつも暖かであった。
「直樹・・・、直樹!」
「・・・・ん?」
隣の席の信也が俺の顔を見ながら自分の机をシャーペンで叩いている。
何のアピールだ? マリンバでも演奏している気分になっているのか?
俺の視線に気がついた信也は黒板を指差した。
「戸田・・・。戸田直樹!」
ああ・・、そうだった。今はこの間の中間テストを返却している時間だった。
・・・俺としたことが奴の顔がモンゴル系だからって、先入観で民族楽器を演奏しているモンゴリアン信也を想像してしまっていた。・・・まあわざとだけど。
俺はゆっくりと腰を上げて答案を配っている教師の元へ歩く。先生はそんな俺を見ても不快な顔をするわけでもなく、そして俺が答案を受け取ると表情を緩めた。
「今回は残念だったな。次回はミスなく頑張ってくれよ」
俺は愛想笑いを返すと、席に戻りテストを四つ折にしながら座る。さらに八つ折、十六折にして先生が見ていないのを見計らって後ろのゴミ箱に投げ捨てた。
「また捨てるのかよ? なあ、これもらって俺の名前に書き直しても良いか?」
「好きにしろよ。どうせ通知表見せるときに親にばれるぞ」
「そのときは、その時! ・・・あれ?」
信也は五㎝四方に折りたたまれた紙を拾い上げて丁寧に広げると、少し驚いた顔をして俺の顔を見た。
「珍しいな・・・。98点?」
「ケアレスミスだ」
「直樹も人間って事だな」
信也は何やら嬉しそうに笑うと、俺の名前を消しゴムで消してそこに自分の名前を書きこんでいる。
そんな信也から視線を移し、窓際に座っている少女を俺はいつものように眺める。
その子は、今返却されたテスト、その試験が行われている時のように外にいる雀の数を丁寧に数えている。
指差しながら数えていると思ったら、首をかしげてまた数えなおす。その動作をなぜか延々と繰り返している。
俺もあのときのようにそれに見入ってしまい、一人で笑っていた。
「君代。・・・君代柚子(ゆず)!」
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