11人が本棚に入れています
本棚に追加
扉を開けて一番最初に感じたのは林檎の甘い香り。
そして目に入ってきたのは――
俺の初恋の女の子の後ろ姿だった。
正確には絵の中の人物が。
全体的に山吹色がかかって優しい印象を与えるその絵。
生き生きとするたわわに実った枇杷の木の横に立つ彼女。
スカートを揺らし、何かを懸命に見つめている。
その見つめる先にあるものはなんなんだ。
どんな表情をしていたんだよ。
そんな疑問から食い入るようにその絵を見つめていると、
「その絵、好きですか」
と黒いスーツを身に纏った白髪の老人に声をかけられた。
最初のコメントを投稿しよう!