山吹色の君

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扉を開けて一番最初に感じたのは林檎の甘い香り。 そして目に入ってきたのは―― 俺の初恋の女の子の後ろ姿だった。 正確には絵の中の人物が。 全体的に山吹色がかかって優しい印象を与えるその絵。 生き生きとするたわわに実った枇杷の木の横に立つ彼女。 スカートを揺らし、何かを懸命に見つめている。 その見つめる先にあるものはなんなんだ。 どんな表情をしていたんだよ。 そんな疑問から食い入るようにその絵を見つめていると、 「その絵、好きですか」 と黒いスーツを身に纏った白髪の老人に声をかけられた。
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