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唇を固く結び
みるみるうちに溢れる涙を目の前の子は必死で拭う。
たどたどしくも言葉を紡ぎ出す彼女の声に俺は耳を傾けた。
「ずっと好きだったの」
「うん」
「大地くんが……七坂さんを好きって知ってたけどさ、フラれたならチャンスかもとか思っちゃった」
「……うん」
その言葉に苦笑いしてうなずく。
顔を拭いながらも
俺の顔をしっかり見て、
「一個だけお願いしてもいい?」
彼女は訊いた。
「俺にできることなら」
できるだけ優しく答えると彼女がおずおずと「お願い」を口にした。
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