2話 勇太と彩奈

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 あの約束をしてから、月日は流れた―――。  蒼空の家には、彩華が一緒に暮らしていた。父の京哉ももちろん一緒だが、仕事場である研究所にばかりいる為ほとんど家にはいない。そして二人の間に生まれた子も・・・いた。  今年で小学二年生になる息子の勇太は、蒼空の血を多く引いているのか面差しがソックリだ。もちろん頭はいいし、運動神経も良かった。そして幼稚園に通いはじめた娘の彩奈は、もちろん彩華に似ていた。そんな家族みんなでの生活に、蒼空は幸せを感じていた。  しかし――――。  今日の朝の目覚めは、最悪としか言いようがない。 「――――ツっ。・・・・ハアッ、ハアッ・・・。」  息苦しさを感じて蒼空は目を覚ました。ベットの中で体を丸めて、苦しさに顔を歪めた。  高校を卒業したあの後、蒼空は藤岡の言う通り治療に専念する為、入院をした。そのおかげか体力も戻り、日常生活も仕事もある程度なら普通に出来るようになっていた。けれど、そんな彼には今でも病弱な体と病気がつきまとう。喘息の発作はほとんど起きなくなったが、その代わりに別の事が蒼空を苦しめるようになっていた。以前に比べ、動悸や不整脈になる回数が・・・・増えていた。 「・・・・ハアッ、ハアッ。――――いっ!!」  最近では胸の痛みが時々襲ってきて、そのせいでこうして目が覚めてしまう事も増えていた。でもこの事だけはまだ、誰にも言っていない。 「・・・・ハアッ・・・ハアッ・・・。」  やっと呼吸も痛みも治まってきた時、ノックもせずに部屋の扉が開かれて、誰かが入ってきた。 「パパっ!いつまで寝てるの~?朝だよ~?」  一人の女の子が傍にやってきて、ニコニコと笑っている。 「・・・・ハアッ。――――彩奈っ。部屋に入る時はっ、ノックぐらいっ、しなさい。」  蒼空は気づかれないように平静を装って、彩奈の頭をなでた。 「ごめんなさい、パパぁ。次から気をつけるぅ。」  まだ完全に呼吸が落ち着いてないからか、言葉が途切れ途切れになってしまいさすがに気づかれるかと思ったが、幼い彩奈は父親である彼の体の事をあまり理解していないのか、全く気付いていない。 「あぁ~、やっぱり。父さんごめんなさい。行っちゃダメだって言ったんだけど、目をはなした隙にいなくなってた。」  続けて入ってきたのは息子の勇太だった。ここまで来てしまった妹の手を取った。
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