2話 勇太と彩奈

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 勇太はカバンから必要な物を取り出し終えた時、底に入った一つの袋に気がつきそれを取り出した。袋には紙が貼ってあって、下手な字で何かが書いてあるそれを読み、中身を見て思わず吹きだした。 「・・・・もう、何だよコレっ。」 “「これでごはんかってたべて   あやな 」”  中に入っていたのは確かにお金ではあったけれど、お札の方にはしっかりと“こども銀行”なんて字が入っていた。悪戯とかそういうのではなくて、本気でそうしてきた彩奈の行動に笑みがこぼれた。      *   *   * 「ねえ、蒼空。」  パソコンに向かって仕事に集中している彼に、彩華は声をかけた。 「ん~?何?」  蒼空は適当な返事をしただけで、こちらを向いてはくれなかった。カタカタとキーボードを叩く音だけが響いて、二人の間に沈黙が流れた。 「・・・・。ねえっ、何も言ってくれないの?」 「ん~?何がだよ?」  仕事に集中している蒼空の姿を見ているのが何だか辛くなって、彩華は後ろから彼を抱きしめた。 「・・・・朝の事、勇太に聞いたよ?何で言ってくれないの?」 「何だよ、そんな事気にしてたのか?」  蒼空はキーボードを叩く手を止めて、自分の胸元にある彩華の手に触れた。 「大丈夫だよ。別に発作が起きた訳じゃないから。」  蒼空はウソをついた。今ここで正直に話したくなかった。ただでさえ心配性な彩華に余計な心配をさせたくなかった。 「ウソ。」  予想もしていなかったその言葉に、蒼空の体がビクリと反応した。 「顔色が悪くて、汗もかいてたって聞いたよ?・・・・大丈夫じゃないよぅ。」 「ホント、大丈夫だよ。ただ夢見が悪かっただけだから。・・・・それにしても、よくそんな所まで見てたよなぁ、勇太は。」  蒼空は話をそらそうと、笑いながら言う。 「一体、誰に似たんだろうな?なあ、彩―――。」  振り返った蒼空の言葉は、柔らかな何かに遮られた。 「――――――。」  そんな行動に少し驚いた様子を見せる蒼空を、彩華はじっと見つめる。 「・・・・余計な心配なんかじゃないからね。」 「・・・・うん。」 ――――わかっていた事だった。“ウソ”なんてものは・・・・彩華には通用しないって。
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