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呼吸も胸も苦しくて、蒼空は会話がまともに出来なかった。途切れ途切れの言葉が精一杯だった。
「・・・・ハァッ!・・・ハァッ!――――いっ!!」
動悸が彼を襲ってきて、追い打ちをかけるかのように胸に激痛が走る。
「蒼空っ、大丈夫かっ!?・・・・胸が痛むのか!?」
「・・・・ハァッ!・・・ハァッ・・・ハァ。・・・・ふう。」
ようやく落ち着いてきた蒼空は、大きく息をついてから言葉を続けた。
「・・・・最近、動悸だけじゃなくて。この激痛のせいで朝とか夜中とか、起きてしまう事が多くなったような気がして。」
「・・・ふむ。痛みは、毎日あるのか?」
藤岡は聴診器で診察を続けながら言った。
「毎日じゃ、ないです。たまにくる、くらい、で・・・・っ。」
高校に通っていたあの頃に起きた事が脳裏をよぎり、蒼空の心は恐怖心で一杯になった。震えてくる体を抑え込もうとして、手に力がこもる。
また大きな発作を起こして、生死をさまよったあの日と同じ事が起きるかもしれない恐怖と、死の恐怖・・・・。
「――――ら。・・・・蒼空。」
そう声をかけられた蒼空は我に返り、俯かせていた顔を上げた。
「気をしっかり持ちなさい。マイナスにばかり考えてはダメだ。」
「・・・・すいません。」
「大丈夫だ。どんな事になったとしても、私が必ず治す。」
そう言ってくれる藤岡の言葉は、とても心強かった。
「今日は点滴一本したら帰りなさい。詳しい検査結果が出たら、また連絡するからな。」
けれど・・・・そんな心強い言葉であっても、彼の恐怖心がなくなる事は――――なかった。
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