3話 再会と転校生

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   *   *   *  いつものように学校に登校してきた勇太は自分の席に座ると、この間買ってきた本を読みはじめた。今までなら彼の傍に幼馴染の愛羅がやってくるのだが、今の彼女・・・・いや、女の子達がハマっているのはあの少女漫画とやらではなく、ついこの前転校してきたアイツにだった。 「杉波君の髪って綺麗だよね。お母さんゆずりなのかな?」  転校生の彼の所に集まる一人の女の子が言った。 「そんな事はない。これは、父ゆずりだよ。」  女の子達がキャーキャーと騒ぐ黄色い声が勇太をイライラさせた。アイツなんかが来なければ、このクラスはいつも通りで平和だったのに。それに、勇太とその転校生との出会いは最悪だった。 『おい、おまえが大河ってヤツか?』 転校してきたあの日、いきなり勇太に向かってそう言ってきたのだ。 『誰だよおまえは。自分の名前も名乗らないで聞いてくるなんて、失礼じゃないのか?』 『それはすまない。ボクは杉波 光輝(スギナミ コウキ)。』 『・・・・僕は大河 勇太。で?僕に何か用?』  すると転校生の彼・・・光輝は、勇太を指差して言い放ったのだ。 『おまえが父さまのライバルと関係ある事はわかっている。覚悟しておけ!』  会ったばかりの相手にそんな事を言われたのはムカつくが、何より一番ムカカついたのは・・・いつも傍にいたはずの愛羅が、その光輝に夢中な事。 「・・・・はぁ。」  何だか光輝に愛羅を取られたみたいで、勇太は余計にムカついていた。    *   *   *  点滴をしてもらって少し調子が良くなった蒼空は、司と二人で近くの商店街まで買い物に来ていた。 「なぁ・・・・早く家に帰って休んだ方がいいんじゃねぇのか?」  商店街で有名な洋菓子店の前で、何を買おうか考えている蒼空に、司が心配そうにそう声をかけた。 「ダメだよ。このまま何も持たずに帰ったら、『どこ行ってきたの?』って絶対聞かれるから。」 「今はそれでいいかもしれないけどよ・・・。いずれはちゃんと、アヤちゃんに言うんだろ?」 「・・・・言うよ。検査結果聞いたら、話すつもりだよ。」  そんな話をしていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。 「――――ちょっと君。まだ決まってないんだったら、先にいいかな?」  その声に振り返った蒼空は、そこにいる人物に驚きを隠せなかった。それは相手も、一緒にいた司も同様だった。
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