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「おまえ・・・・もしかして、大輝?」
忘れもしないあの真っ赤な髪は、今でも長いままだった。
「おまえ、あん時に引っ越したんじゃなかったのか?」
彼は高校の時に母親がこの街の病院に転院してきた為、蒼空達の通う高校に転校してきた。しかし半年もしないうちに母親に転院が決まり、この街から出て行ったはずだった。
「・・・・蒼空に、司かい?こんな所で会えるなんて思ってもいなかったよ。これは運命かな?」
「相変わらずだな、おまえ。で?何でここにいるんだよ?もしかして・・・・帰ってきたのか?」
「その通りさ。母さんの調子も良くなったし、それに何よりボクのハニーがこの街の病院で仕事する事になったからね。」
大輝は前髪をかきあげ、自慢げに言った。
「おいっ、『ボクのハニー』だってよ!そんなセリフ、ドラマだけにしろよっ!」
司の笑いのツボにハマったらしく、ゲラゲラと笑っている。
「・・・・おまえ、結婚したのか?」
「ご名答。『杉波 大輝』、それが今の僕だ。・・・・そういう君達こそ、愛する人と一緒になったようだね。」
大輝は彼ら二人の左手の薬指に光る指輪を見て、そう言った。
「蒼空。君はもちろん・・・・あの子とだろうね?そうじゃなきゃ、許さないよ?」
「何だよ、まだ気にしてたのか?人の女の事考えてるとか問題だろ、それ。」
高校の時の事が思い出されて、なんだか懐かしく思えた。あの時はライバル同士で、嫌な奴で。勝負とかをしていたのに、今となっては大輝も大切な友人の1人だった。それは司も大輝も同じ気持ちだ。
「もう一つ、聞いてもいいかな?」
「何だよ・・・・・ツっ。」
「おい、大丈夫か?」
蒼空が胸元を押さえているのに気がついた司が、心配そうにそう言った。
「だっ、大丈夫っ・・・。いつものっ、動悸っ・・・・。」
苦しそうにしている彼を見て、大輝は聞きたかった答えを・・・知った。
「・・・・それは、治らないのかい?」
蒼空はふぅっと溜息をつき、空を見上げて・・・言った。
「――――治らないよ。僕はこの体と一生付き合っていかなきゃいけないんだ。
それを聞いた司が少し怒った顔をして、蒼空の肩をつかんだ。
「蒼空。オレ言わなかったか?治らないって思うなって。」
「わかってる。でもそれは・・・・少し良くなるだけだって、わかってしまったから。それに、こんな体でも今は幸せだから――――平気。」
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