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* * *
――――僕、生き延びられるかな・・・。
必死で呼吸をしていても一向に治まらなかった。むしろ呼吸をしている事さえも辛くなってくる。
――――それとも僕、ここで終わっちゃうのかな・・・?
苦しい、辛い・・・。ここで終わってしまった方が、楽になれるような気がしてきた。
――――母さんと同じように、なっちゃうのかな・・・?
『ダメよ、蒼空。』
僕はいつの間にか白い空間の中にいた。声のした方を見ると、そこに一人の女の人が立っていて、僕を見つめてくる。
なぜか見覚えのある・・・・その人。
「・・・・母さん。」
『諦めてはいけないわ。大切な人を悲しませてはダメ・・・。』
「・・・・大切な、人。」
『そうよ。あなたは私みたいになってはいけないわ。生きるのよ――――蒼空。』
「・・・・彩華っ。」
泣いている彩華の姿が頭をよぎって、僕は死が怖くなった。
――――嫌だ。生きたい・・・・生きたいよ。
* * *
「・・・・ぅ・・・。」
目をゆっくりと開けると、そこには見慣れた病院の、白い天井が目に映る。あたりを見回すが、病室には自分一人きりだ。片腕には点滴、口には酸素マスク、そして心拍数とかが表示される心電図モニターの機械がそばにあった。
体を動かそうとするが、まるで石になったみたいで指ひとつ動かせなかった。
(体が・・・・動かない・・・?)
何度やっても同じで、蒼空は体をピクリとも動かせない。自由なのは首から上だけだった。
ガラッ・・・。
「おおっ・・・蒼空。目が覚めたんだな、よかった。このままおまえまでいなくなってしまうのではと、心配したぞっ。」
扉を開けて入ってきたのは、父の京哉だった。息子の存在を確認するかのように、抱きしめる。
そんな父を見て、蒼空はずっと会っていなかったような気分になった。
「父・・・・さ、ん。」
酸素マスクをしているせいで、蒼空は上手く話せない。
「いい・・・・何も言わなくて。今、先生呼ぶからな。」
京哉はナースコールを押してそう言った。
数分とたたずに、病室に藤岡と看護師が入って来る。
藤岡は蒼空の胸元に聴診器をあてて診察したり、心電図モニターに表示される数値をみる。
「・・・・せん、せ・・・ぇ。」
藤岡は仕方なく、酸素マスクを外してやった。
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