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「じゃあ、後は頼む。」
メンバーの全員に「行ってらっしゃい!」と見送られながら、蒼空と京哉はその部屋を後にした。
* * *
転校してきたアイツ・・・光輝は、勇太と同じサッカークラブに入ってきた。彼のプレーはとても上手くて、しかも前の学校でしていた時は、勇太と同じポジションを担当していたそうで、二人の中にライバルな関係が生まれた。でもそれは最初の頃だけだった。一緒にサッカーをしているうちに、何だか気が合う存在である事に気づきはじめていた。
「勇太っ!シュート決めろっ!」
同じチームメイトからボールを受け取った勇太は、相手のゴールを一気に目指して走りだした。しかしゴール目前の所で数人の相手に行く手をふさがれ、なかなか進むことが出来ないでいた。
「っ・・・・誰かにっ・・・。」
このままでは相手にボールを奪われてしまう可能性があった。この状況を打開するには、誰かにパスを回すしかない。あたりをキョロキョロと見まわすが、味方チームメイトの傍には敵チームの奴がいて、近くにいる味方にパスを回せない。
「ホラっ、よこせってばっ!」
敵チームの一人がイライラをつのらせ、そう叫んできた。
このままではマズイと思った時、一人だけ敵チームの奴が傍にいない味方を見つけた。でもそれは勇太がライバル視している光輝だった。自分にはパスは来ないだろうとでも言うような空気を漂わせる彼に向かって、勇太は思い切りボールを蹴り上げた。
「っ―――光輝っ!おまえが決めろっ!!」
反射的にパスを受けた光輝は驚いた顔をしていたが、その場からゴールへ向かってシュートを放った・・・。
その時・・・試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
「なぜボクにパスを出した?今までそんな事、しなかったはずだ。」
「やめたんだ。ライバルだ、嫌な奴だって思うのをさ。最初の頃はそればっか気にしてたけど、一緒にサッカーしたり話したりしてたら・・・おまえがいい奴だってわかったから。」
そう言って勇太は笑顔を見せた。
「・・・・考えていた事は一緒だったようだね。それに、ボクは君に謝らなければならないしね。」
「謝る?どうして?」
「転校してきた日のあのバカな宣言みたいなものは、忘れてくれ。あの時はてっきり、ボクの父のライバルとやらが君の父って聞いてて・・・悪い意味でのライバルかと思っていたから。あの時は悪かったよ。」
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