5話 オモテの気持ち、ウラの気持ち

3/8

146人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「ゴメンっ!ただ僕は、はっきりとわかってから言おうと思ってて。でもいざ言わなきゃってなったら・・・・いつ言えばいいかわからなくてっ。」  彩華の為を思ってやった事が、逆に泣かせてしまう結果になってしまった。 「・・・・ちゃんと言ってくれなきゃ、ダメだからね?蒼空っ。」 「うん。わかってる・・・・わかってるよ。」  でも蒼空は・・・・本当に言わなければならない事までは、いう事が出来なかった。    *   *   *  最近の学校での話題は、来月に迫る運動会の話でもちきりだった。あっちでもこっちでも、「何の種目に出る?」とか「赤白どっちになるかな?」とかの話ばっかりだ。そしてたった今渡されたプリントには「家族の方の種目参加についてのお知らせ」と書いてあり、内容を読んだ勇太の口から、溜息がもれた。 「やった!今年はパパとだ!」  クラスの子の一人が、嬉しそうにそう言った。 「なぁなぁ。勇太君ちの父ちゃんも来るだろ?僕、負けないからな!」  クラスの中の別の子が、そう話しかけてきた。 「・・・・さぁね。」  勇太は答えたくなくて、適当な返事をした。 「そういえば勇太んちの父ちゃんって、あんま見かけないよなぁ?」 「・・・・・。」 「なぁなぁ。何で来ないんだ?“たんしんふにん”とか?」  質問攻めをしてくるその子にだんだんイライラしてきて、黙らせようと思ったその時――――。 「僕の父さんは、ホストクラブのトップに立つ偉い人なんだっ!」  光輝が無理やり話に割り込んできて、そう語る。 「“ほすとくらぶ”?なんだそれ?っていうか光輝には聞いてないし~。」  そう言って勇太の所を離れていくその子を確認して、光輝は息をついた。 「まったく。アイツは失礼すぎるね。君にあんな事聞くなんて。」 「・・・・光輝、知ってたのか?」 「知ってるからこうして止めたんだ。・・・・父さんから君の親の事は聞いていたからね。」 「いくら知らないって言ったって、ひどいですわ。勇ちゃん、大丈夫?」  心配そうに愛羅が顔を覗き込んできた。 「大丈夫だよ。ありがと、二人とも。」
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

146人が本棚に入れています
本棚に追加