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「蒼空。おまえは一ヶ月もの間3、昏睡状態だったんだ。」
「・・・・一ヶ月、も?確か僕、学校の屋上にいて・・・それで――――なんだっけ?」
「大きな発作を起こしたんだよ。それで救急車で運ばれてきた、という訳さ。・・・・ふむ、体の方はいいようだな。」
藤岡は一通りの診察を終えると、ふうっと息をついた。
「まさか退院して早々、あんな事が起きるとは・・・・本当に驚いたよ。おまえはあの時、死にかけたんだ。」
―――『そうよ。あなたは私みたいになってはいけないわ。生きるのよ―――蒼空。』
脳裏にあの時の母親の姿がよぎった。自分を助けてくれた・・・言葉。
「・・・・父さん。」
そう呼ばれた京哉は、蒼空の手を握った。
「何だ、蒼空?」
「――――母さんの声がしたんだ。あきらめてはダメ、生き・・・ろ・・・って。」
睡魔が襲ってきて、瞼が重くなってくる。
「そうか・・・あいつが助けてくれたのか。」
「大切な人を、悲しませては、ダメ・・・だって。だから、僕――――。」
そこで言葉が途切れて、蒼空は眠りに落ちていった・・・。
彩華は病室の前に立って、扉に手を出そうとしては引っこめまた手を出しては引っこめを繰り返していた。
「アヤちゃん・・・・何してんだ?」
突然後ろから声をかけられて、ビクリとする。
「なっ、なななんで司がここにいるのよっ!」
「そりゃいるだろ。やっと今日蒼空の面会禁止がとかれたから会いに来てたんだよ。で・・・?中、入らねぇのか?」
「だだだっ、だって・・・。久しぶり過ぎてなんか、どう入って行ったらいいかわからないんだもん!」
司は溜息をつくと、手に持っていたペットボトルを渡した。
「それ、蒼空に渡してくれ。さっきアイツに頼まれて買ってきたんだ。」
「え・・・?自分で渡さないの?」
司はふるふると首を振る。
「あいつ・・・もう限界みたいだから行ってやれよ。話をしてても大半がアヤちゃんの話ばっかだし。」
彩華の顔がボッと赤くなった。
「だからさ・・・オレが手を貸してやるから、行ってやれよ。」
コクリと頷く彩華を確認すると司は病室の扉を開けた。
「・・・・司。水買ってくるのに一体何分かかってるんだよ。」
「いやぁ・・・悪い悪い。ちょっとそこで可愛い女の子に会ってさ。」
「ちょ・・・・。どっかの誰かみたいなセリフ言って何がしたいんだよ。」
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