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「・・・・つっ・・・。」
目を覚ました蒼空が最初に見たのは・・・見慣れた白い天井だった。
(久しぶり・・・白い天井さん。)
最近は入院しなければならないほど体調が悪くならなかったので、この天井を見るのは本当に久しぶりだった。
「よかった。目が覚めたのね、蒼空。」
蒼空が声のした方を見ると、そこには彩華がいた。
「・・・彩華。・・・・僕は、どうしたんだっけ?」
彩華に電話をかけた所までしか、蒼空は覚えてなかった。でも、ここに・・・病院にいるという事は、倒れたのだろう。
「心配しなくても大丈夫だよ。さっきの発作は吸入器ですぐに治まったけど、その後気を失っちゃったから・・・一応ここに連れて来たの。」
彩華はそう言いながら、ナースコールを押した。
「そっか・・・・。全然、覚えてないや。」
コンコン・・・。
病室の扉がノックされ、中に入ってきたのは藤岡と看護師だった。
藤岡は入って来るなりすぐに、蒼空の体を聴診器で診察をはじめた。
「蒼空、家で何があったんだ?」
正直に家で何があったのかを話すと、藤岡は溜息をついた。
「まったくおまえは・・・。いい大人が何をやっているんだ。」
「・・・・すいません。」
「彩奈、どうしてあんな事したの?パパが走ったりしちゃダメなのがどうしてわからないの?」
病室の隅っこでヌイグルミを抱きしめている彩奈に向かって、彩華が怒る。
「だってぇ・・・。」
「だっても何もないわ。たった一人のパパなんだから、ちゃんと考え―――。」
「もういいよ彩華、それくらいでやめなよ。・・・・彩奈だけが悪い訳じゃない、僕も悪い。」
蒼空はベットから起き上がり、彩華の言葉をさえぎった。
「でもっ!!」
「彩奈はきっと、悪気があってしたんじゃないんだ。この子はまだ幼いし、勇太だって同じ様な事があっただろ?この子はただ・・・・遊びたかっただけなんだ。」
発作を起こした時の事はよく覚えていなかったが、一つだけしっかりと覚えていた事があった。
――――『ごめんなさいっ、パパ。ごめんなさいっ!』
泣きながら何度も何度も謝っていた彩奈の声は、しっかりと耳に残っていた。
「・・・・ごめんなさい、パパ。彩奈のせいで。」
彩奈が傍にやってきて、泣きそうな顔で謝ってきた。
「ごめんな、彩奈。驚いたよな・・・・ごめんな。」
蒼空は優しく、彩奈の頭をなでた。
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