5話 オモテの気持ち、ウラの気持ち

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「蒼空・・・・。本当に気をつけるんだぞ?“今までの体”とは違うんだからな?」 「・・・・わかってます。」 「ねぇ・・・それってどういう意味、蒼空?」  蒼空はふうっと息をついた。  本当に言わなければならない事を言う――――覚悟を決めた。 「彩華。僕・・・・君にまだ言ってない事があるんだ。」  蒼空はゆっくりと手を胸元に持っていき、そこに手を当てた。 「僕のココ・・・・あんまりいい状態じゃないんだって。」 「何よっ、それ!わかんないよっ!どういう意味!?」  彼の言いたい事は何となくわかっていたが、彩華は信じたくなかった。 「この間、父さんと病院に行ってきたって言っただろ?その時に、言われたんだ。」 「そんなのウソっ!違うよねっ、先生!?」 「・・・・ウソではありません。軽度の疾患ではありますが、彼の心臓は――――あまりいい状態ではない。」 「ごめんな、彩華。本当に、ごめん・・・。」  蒼空は彩華を抱きしめて、何度も謝った。 「ふぅ。入院にならなくて何だかホッとしたよ。」  蒼空は部屋のソファーに座って、お茶を飲みながらそう言った。  あの後、藤岡に入院するほどでもないと言われ、すぐに家に帰って来ていた。 「本当だね。朝は何か苦しそうだったし、買い物から帰ってきたら発作は起こしてるし。今日は本当に驚いてばっかりだよ。こういう命にかかわるような事、隠してちゃダメだからね、もう。」 「ゴメン。今度からはちゃんと言うよ――――。」  彩華と話していた蒼空は、ふと視線に気がついてそちらを見た。 「・・・・勇太?どうかしたのか?」  じっとこっちを見ていた勇太は、さっと手に持っていた紙を隠した。  何か言いたそうにしている勇太の気持ちに気づいた蒼空は、すっと手を出した。 「そう言えばそろそろ運動会だろ?プリントとかもらって来たんじゃないのか?」  勇太は隠していた紙をおそるおそる差し出した。  本当は見せるべきではないと勇太はわかっていた。父兄参加の今年の種目は・・・・蒼空には無理があったから。 「・・・・・。」  蒼空はそのプリントを手にしたまま、顔を俯かせた。 「・・・・父さん?」  顔を覗き込んだ勇太は見てしまった。とても悲しそうで、悔しそうな・・・そんな父の顔を。 「ゴメンな、勇太。僕は・・・・ダメな父親だな。」
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