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「蒼空・・・・。本当に気をつけるんだぞ?“今までの体”とは違うんだからな?」
「・・・・わかってます。」
「ねぇ・・・それってどういう意味、蒼空?」
蒼空はふうっと息をついた。
本当に言わなければならない事を言う――――覚悟を決めた。
「彩華。僕・・・・君にまだ言ってない事があるんだ。」
蒼空はゆっくりと手を胸元に持っていき、そこに手を当てた。
「僕のココ・・・・あんまりいい状態じゃないんだって。」
「何よっ、それ!わかんないよっ!どういう意味!?」
彼の言いたい事は何となくわかっていたが、彩華は信じたくなかった。
「この間、父さんと病院に行ってきたって言っただろ?その時に、言われたんだ。」
「そんなのウソっ!違うよねっ、先生!?」
「・・・・ウソではありません。軽度の疾患ではありますが、彼の心臓は――――あまりいい状態ではない。」
「ごめんな、彩華。本当に、ごめん・・・。」
蒼空は彩華を抱きしめて、何度も謝った。
「ふぅ。入院にならなくて何だかホッとしたよ。」
蒼空は部屋のソファーに座って、お茶を飲みながらそう言った。
あの後、藤岡に入院するほどでもないと言われ、すぐに家に帰って来ていた。
「本当だね。朝は何か苦しそうだったし、買い物から帰ってきたら発作は起こしてるし。今日は本当に驚いてばっかりだよ。こういう命にかかわるような事、隠してちゃダメだからね、もう。」
「ゴメン。今度からはちゃんと言うよ――――。」
彩華と話していた蒼空は、ふと視線に気がついてそちらを見た。
「・・・・勇太?どうかしたのか?」
じっとこっちを見ていた勇太は、さっと手に持っていた紙を隠した。
何か言いたそうにしている勇太の気持ちに気づいた蒼空は、すっと手を出した。
「そう言えばそろそろ運動会だろ?プリントとかもらって来たんじゃないのか?」
勇太は隠していた紙をおそるおそる差し出した。
本当は見せるべきではないと勇太はわかっていた。父兄参加の今年の種目は・・・・蒼空には無理があったから。
「・・・・・。」
蒼空はそのプリントを手にしたまま、顔を俯かせた。
「・・・・父さん?」
顔を覗き込んだ勇太は見てしまった。とても悲しそうで、悔しそうな・・・そんな父の顔を。
「ゴメンな、勇太。僕は・・・・ダメな父親だな。」
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