6話 僕に出来る事

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「どうしても外せない用事があるらしくて、お母さんと二人で出かけちまってな。悪ぃな、今日の食事会に全員集まれなくてよ。」  実はついこの前、彩華の提案でみんなで久しぶりに家で食事しよう!という事になり、司達一家と京哉が招待された。しかし京哉は今日は仕事を休めないらしく欠席。結局司だけになってしまい、楽しい食事会は幕を閉じたのだった。 「勇太ぁ。そっちは司に任せて、こっち手伝って。」 「はぁーい。」  勇太は食器棚の前に椅子を持ってきて、彩奈がフキンで拭き終えた皿を少しずつ片づけをはじめた。何個かを棚に戻していたが、次に渡されたそれは自分よりも少し高い位置に戻さなければならなかったが、背伸びをして何とか戻す事が出来た。   しかし―――。  背伸びをしたせいで乗っていた椅子のバランスが崩れて、勇太は足を踏み外した。とっさに食器棚をつかんだせいで、棚から何枚かの皿が落ちて床に割れた皿の破片が散らばった。このまま落ちれば、勇太の体は破片の散らばる床の上だ。 (・・・・っ。・・・助けてっ!)  勇太は思わず、ギュッと目を閉じた。・・・。 ―――――。 「勇太っ、どこもケガはないか?」  そう言われてゆっくりと目を開けると、そこには父の・・・蒼空の姿があった。 「う、うん。・・・・大丈夫。」 「そっか・・・・ならよかった。――――ツっ。」  蒼空は左腕をおさえて、痛みに顔を歪めた。 「蒼空っ、大丈夫!?傷、見せて。」 「大丈夫だって。ちょっと破片で切っちゃっただけだから。」  彩華はすぐに救急箱を持ってきて、傷の手当てをした。本当にちょっと切っただけで大した事はないのに、ガーゼに包帯と少し大げさだ。 「なんか大げさじゃないか、彩華?」 「いいのよ!これで!」 「『いいのよ!』って言われても、これじゃ明日の定期検診で何か聞かれそうなんですけど・・・。」 「正直に話せばいいでしょ?だから、これでいいの!」  こういう時の彩華には、何を言っても無駄で・・・。 「・・・・はいはい。」  蒼空はいつも、こんな彩華に逆らえなかった。  今日の定期検診の付き添いは、司でも京哉でもなかった。というか、蒼空の心臓の事が分かってからは、ほとんどが彼女――――彩華だった。 「こんにちは、蒼空。今日の付添も、奥さんなのか?」  診察室に通され椅子に座った彼に、藤岡はそう声をかけてきた。
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